ごあいさつ

こんにちは。うかじ小児科医院の宇梶光大郎と申します。
このたび縁あって、小宮山亮子先生が30年余の長きにわたって続けられたこみやま小児科医院を引き継ぎ、平成23年4月5日に「うかじ小児科」とリニューアルオープンしました。
昭和55年12月15日から診療を開始され、当初小さかった子ども達が、今ではお母さんになり、お祖母さんになり、2代目、3代目のこども達を連れて来られています。この歴史あるクリニックを継承して行くことはたいへんなプレッシャーなのですが、引き続き地域の皆さんに厚い信頼を得られるようになるまで頑張るつもりです。 
こども達の顔色・表情を覗き込み、胸やお腹に手を聴診器を当てながら、またお母さん、お父さんのお話に耳を傾けながら、「この子にどうしてあげるのが最も良いことなのだろう」ということを第一に診療してゆきますので、どうぞよろしくお願いします。

「世界のすべての子ども達が元気に遊べますように!」

「世界のすべての子ども達のために頑張ります」九州大学医学部卒業時の挨拶で誓ったことばです。
研修医2年時の九大病院小児科の研修医向けマニュアルには「世界のすべてのこども達が海で元気で遊べますように」と最後に記しました。(先輩に「どうして山じゃダメなの?」の尋ねられたのですが、当時は若くて海の方が好きだったのですね。今では『趣味は山歩きです』が・・・。)
 西別府病院、大分県立病院等でのレジデント研修、九州大学大学院・九大病院検査部での研究後、11年目に臨床医か基礎研究者か、どちらかを選ばねばならない時が来ました。その夏に九大小児科の当時の医局長が僕の言葉を覚えていてくださって「すべてのこども達が海で元気で遊べるように頑張ろうよ」と言ってくれたのでした。その言葉は思い悩んだ時に何度も自分では反芻した言葉でもありましたが、この時の先生の声は僕にとってはまさに天啓とも等しいものでした。
 再び戻った臨床の場は、決して生易しいものではありませんでした。福岡東医療センター、北九州医療センター、九州医療センターと勤めましたが、臨床医としての力量を試される厳しい難しい局面もありました。しかし、そんな時僕を支えてくれたのは、当のこども達であり、そのお母さん、お父さんでした。
 小児科医19年目の昨春は、研修医1年目の時に福岡市立こども病院でお世話になった先生が始められたならざき小児科クリニックの外来診療をさせていただきました。また本年に入ってからは小宮山先生の御診療にも接することができ、これまで病院勤務ばかりだった僕に小児科医の原点を思い起こさせてくれました。
 そして20年目の今春、「世界のすべての子ども達が元気に遊べますように!」の大風呂敷はそのままに、まずはこの地から第一歩を踏み出したいとの思いで、医院を始めたのです。

未曾有の大地震のなかで、「すべてのこども達が元気に遊べますように」というフレーズも空ろにしか響かないではないか、とも自問しました。なにかをやらなければと焦燥感に駆られながらも、東北・関東にいるこども達に対して僕が今ここでできることはないに等しいのですから。
 そんななか、「すべては『こどものために』」という見出しを朝日新聞で見つけました(4月2日)。富山和彦さんという方が、「日本復興で一番大切なことは、(中略)『子どもたちにプラスかマイナスか』で判断することです」「こどもたちの未来を軸に考えていく」と何度も強調されておられたのです。歯切れのよい潔い言葉に元気をもらいました。
地震の1秒前までの平和な日々の暮らしが1秒後に覆されるという恐ろしさを僕らは思い知らされた。しかし、いやだからこそ、やはり僕は「世界のすべてのこども達のために」微力を尽くさねばと思いを新たにしました。

平成23年4月5日 宇梶

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