ヒブワクチンの追加接種は1歳になったらできるだけ早く!

日本小児科学会は平成24年4月20日版の推奨する予防接種スケジュール (1)において、ヒブワクチンの追加接種の時期を12か月から15か月と示しました。主な変更点の第一として、『ヒブワクチンの追加接種(④)に関して、添付文書上は、③からおおむね1 年あけるとありますが、追加接種による効果は、早期に得られるべきであると考えます。したがって、“④は12 か月から接種することで適切な免疫が早期にえられる”という1 文を加えました。』とも記しています。これは、不活化ポリオワクチンや3回型のロタウイルスが加わった8月5日版 (2)でも踏襲されています。
ヒブワクチンは日本においても導入前の2008年から2010年の3年間と導入後の2011年では、ヒブ髄膜炎の患者数を(10万人当り)7.7人から3.3人に57 %も減少させたことが厚生労働省研究班の調査で分かりました (3)。また同時に髄膜炎に罹患した子ども達はワクチン未接種だったり、回数が少なかった例であったことも報告されました。ヒブ髄膜炎に罹ってしまうのはほとんどが0歳、1歳の子ども達です。効果が絶大であるワクチンであるが故、リスクの大きな時期を逃すことなく免疫をつける必要があるのです。
しかし現行の制度のなかでは、添付文書や予防接種ガイドラインに定められた通りの追加接種は初回免疫終了後「おおむね1年」でなければ、志免町をはじめ多くの自治体では行政措置予防接種として認められません。おおむね1年とは11から13か月と解釈するのが通例だそうです。これを遵守すると、2,3,4か月と3回の初回免疫を終えたお子さんが追加を受けるのは早くて15か月になってしまいます。せっかく3回のヒブワクチンを受けたのに、追加接種前に髄膜炎にかかってしまう事態は避けねばなりません。
追加免疫の効果(ブースター効果)は初回免疫終了後4-6か月の間隔であれば十分と言われていますから、1歳早期に追加接種を受けることは医学的には全く問題ありません。実際、英米を含め多くの国ではヒブの追加接種は12-15か月になっており (4)、初回接種終了後おおむね1年後、なんて悠長な国は寡聞ながら日本だけです。(ちなみに米国ではヒブワクチン導入後、ヒブ髄膜炎は99 %減少しています。)
平成24年5月から9月にかけて、数多くの予防接種研修会やセミナーに参加しましたが、予防接種・小児感染症の専門の先生方は、「子ども達のために(ヒブワクチン追加)1歳過ぎの早期接種を」、(推奨スケジュールの1歳過ぎ早期のヒブ追加接種についての一文について)「ここはエキスパート・オピニオンとしては引けない」などとおっしゃられています。

私も地域の子ども達やご家族に小児医療を提供する専門家の端くれとして、上の意見に与するものです。

以上を踏まえ、当院では1歳過ぎのお子さんに早期にヒブワクチンの追加接種していきます。まだ志免町が認めない早期接種ですから、任意接種扱いになります。費用のご負担はいただきませんが、接種後の健康被害に対する補償が定期接種や行政措置予防接種に比べて随分低くなることが心苦しい点です。解決策としては、定期接種(MRワクチンやDPT三種混合ワクチン1期追加、不活化ポリオワクチン)との同時接種です。定期接種と任意接種を同時に行った場合の健康被害に対する補償は、より手厚い定期接種後の救済制度が適応されるからです (5)。

1歳過ぎ早期の接種でヒブ髄膜炎から子ども達を守ることができると共に、定期接種との同時接種によって接種後の補償の面でも子ども達を守ることができます。
是非ご検討ください。

1) http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110427.pdf
2) http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110427_2.pdf
3) http://sankei.jp.msn.com/life/news/120524/bdy12052410410001-n1.htm
4) http://www.cdc.gov/vaccines/schedules/downloads/child/0-18yrs-11×17-fold-pr.pdf
5) http://www.know-vpd.jp/vc/vc_hlthhgi.htm

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